ある閉ざされた雪の山荘で

ある閉ざされた雪の山荘で (講談社文庫)

ある閉ざされた雪の山荘で (講談社文庫)

久我和幸の独白と山荘での様子が淡々と書いてある本。山荘のオーナーの小田さんと、若者たちが山荘へ着いた直後から物語は始まる。
山荘に集められたのは、劇団の演出家である東郷の手紙からだった。ここでは次から次に事件が起きる設定で舞台の演出をするとのこと。
若者たち7人は、ある劇団のオーディションで合格した7人だった。久我以外は全て劇団のメンバーだった。久我だけが別の劇団から参加していた。

合格した7人の若いメンバーは、久我和幸、雨宮、本多、田所の男四人と、温子、由梨江、中西という女性3人だった。由梨江の美貌が圧倒的で、久我は由梨江に魅せられてオーディションに参加、実力で合格をもぎ取った。全て由梨江を手に入れるために。由梨江は大して演技は上手くないが、その圧倒的な美貌で審査員を狂わせ合格したと思われる。
しかし由梨江を狙うのは久我だけではなかった。
田所も雨宮も由梨江を狙っていた。

そして演技なのか演出なのか分からない殺人事件が始まる。遺体は無し。温子が一番目に犠牲になるが、温子が最後に一人で居た部屋には紙が落ちており、「温子はヒモやコードで首を絞められた跡があった」と書かれていた。

一泊するごとに犠牲者が増えていく。しかし遺体は見つからない。紙が落ちているだけ。山荘に集められた若者たちは次第にこれが芝居場の演出なのか、本当の事件なのか分からなくなり、パニックになる。しかし外部に連絡すれば、あのオーディションの合格は取り消しとあるので迂闊に連絡もできない。どうしたらいいのだろうか。

読後感。久我も雨宮も田所も、由梨江の美貌に惑わされている。オーディションの審査員もだ。これが結局、悲劇に繋がっていってるんだと思う。犯人はもちろん、この7人の中にいるが、その7人の中だけではない。
久我は名探偵になり本物の劇さながらに事件の真相を暴いていく。