地図帳の深読み

地図帳の深読み

地図帳の深読み

日本のことも世界のことも地図を通して理解を深める本。
とても面白かった。

この本で初めて知ったこと
・地図上の濃い緑で塗られているところは海面下(0メートル以下)の土地。オランダのポルダーで顕著。
・世界で最も低い土地はイスラエルとヨルダンの国境に位置する死海とその周辺。濃い緑。

・米国で低い土地はデスバレー


吉野川江の川は山越えする。
・ヨーロッパのライン川、米国のサスケハンナ川も山越えする。
四万十川は太平洋を目前にして内陸へ向きを変える
ウイグルのタリム川は海へ流れていかない
・長江、メコン川の源流はチベット高原に近い
・中央分水界(本州なら川が太平洋側に流れるか日本海側に流れるか分かれるポイント)

・スイスはドイツ語、フランス語、イタリア語、ロマンシュ語が用いられているが(ここまでは知っていた)、それがスイスに描かれた等高線を見て分水界を辿ると川の流れと言葉が一致していた。
→確かに、昔山越えするのも川を渡るのも一苦労だったに違いない。それが境界となり、言葉が形成されていったのでは。行きやすい場所ほど言葉も伝わるし似る。著者の方もそのような見解だ。

アメリカのグレートソルト湖について
海水より塩分濃度の濃い大塩湖で塩水性の小エビ、藻類ぐらいしか生息できない
北米大陸初、大陸横断鉄道が開通し、この湖にも橋がかかる。しかし築堤が低下し崩壊の危機、そしてこの湖には流れる川が南側にしかなく、低下した橋を境にして南北の塩分濃度の差が激しくなってしまった
そのため塩分調整装置水路が設けられ塩分濃度を細かく調整している

横浜市相模国なのか、いや武蔵国のエリアの方が大きい

・古代に決まった近畿の境界は細かい
兵庫県は七つの国にまたがる
和歌山県には飛び地がある。昔から木を運ぶために川を使っていて上流と下流で文化的な繋がりがあるため。
・市町村レベルでも飛び地はある。神奈川県相模原市には東京都町田市の飛び地があるし、大阪府池田市の中にも兵庫県伊丹市の飛び地がある。


・アラスカのマッキンリー山は、デナリ山へと先住民の言葉に名称変更された。

八郎潟の歴史。昭和30年、八郎潟は琵琶湖の次に大きい湖だった。食料事情の厳しい時代、背に腹は変えられないと干拓し優秀な農家ばかり集められた土地。

・戦後間もない頃の各都市の人工統計と現在との比較

市町村合併で消え行く歴史的地名。例えば四万十市になった中村市越前市になった武生市など。

・インド政府は実力によって長年各国の植民地だった港を擁する都市を取り戻している

アラル海今昔(これはウズベキスタンに行ったときにウズベキスタンのガイド本にも書かれていて知っていたことだが、この本からも新しい知識を得れた)アラル海に流れ込むアムダリア川の水をはるか上流で取り、1445㎞に及ぶカラクーム運河(コンクリートで固めていない)でトルクメニスタンの乾燥地帯へ灌漑、綿花栽培を行ったが、目的地に着く前に半分が漏水、漏れた水が塩害を起こし、その周辺の農地がほぼ失われ、アラル海は元の面積の87%が失われ、貯水量も93%が失われた。塩分濃度が急速に高まり海水の濃度をはるかに越え漁業は壊滅。骨折り損のくたびれもうけで自然の大規模な改変がどれだけ大変な状況を引き起こしているか傍観するしかないとのこと。
かつての港には船が打ち捨てられ湖岸がはるかかなたに遠ざかった。内陸国ウズベキスタンでは貴重な漁業の町だったのに。(かつての北岸アラリスクやかつての南岸モイナク)


・函館とローマは同じ緯度。ニースやカンヌといった南フランスは知床付近と同緯度。

・日本の北緯35度線を辿ると、思ってるよりも錯覚を伴っていたことが分かる北緯35度と東経135度の末尾5度同士が交わるのは兵庫県西脇市そばしかない。

・東京都練馬区とアラスカの人口がほぼ同じ
オーストリア、北海道、中国の重慶市の面積がほぼ同じ

・地図に描かれた「名産イラスト」の今昔
地図記号の外国との違い

などなど、知らないこと、知っていてもより深く知れたこと、北緯35度など錯覚していたことが色々知れる本で面白かった。今昔を比較したり海外と比較したりするのが興味深かった。