深夜航路

深夜航路

深夜航路

面白くて一気に読んだ。

同じ著者が書いた、「秘島図鑑」も面白かったが、それを読んでからこれを読むとより面白いと思う。

深夜0時以降に出発する船、というのを切り口に日本で運行する深夜便を取材した本。船や待合室の様子、客層から船の経営状況まで、幅広く著者の興味の赴くままに書かれている。

著者の独自の視点、が興味をひく。

2016年12月24日
青森→函館  午前2時4分発 津軽海峡フェリー
ブルーマーメイド
船に乗り込むのはトラックばかり。
2014年に就航した新しい船で船内は明るく美しい。
著者は深夜航路に乗ったあと、その先を少し旅するが、この回は函館山の海側の「何も無さ」をあばきにいく。夜に灯ひとつない海側が気になり訪ねてみると、60年前までは寒川という小さな集落があり、絶壁の麓にペタッと張り付くような集落だった。海がシケると山側の迂回路を通るが、ロッククライミングに近く転落死した人も。ノミと金づちで掘られた小径もあり、洞窟には危険な吊り橋もあり海がシケると、そのまま波にさらわれた人も。
もう吊り橋は無いので寒川集落跡へはいけない。
といった内容だった。
何だか著者と一緒に探検している気分になった。

2017年6月下旬
大洗→苫小牧 午前1時45分発
さんふらわあ しれとこ

さんふらわあ、なので太陽マークがでかでかと描かれている。さんふらわあ しれとこは船室の回りに回廊のようなデッキが設けられている。展望ラウンジもある。船室はトラックドライバーが大半。深夜便はトラックやコンテナの輸送が大半なのでレストランは営業しておらず等級もほぼ2等のみ。なので乗客は皆平等という大衆感が船内に滲み出るとのこと。ホールには自販機、電子レンジ、給湯設備も整い、白米のパックを食べる人、豆腐一パックを食べる人など、自宅?と突っ込みたくなる光景だそう。
その先の旅で著者は苫小牧から室蘭へ。全国の大半の水族館が近代化してしまった中、古きよき水族館の様相の市立室蘭水族館へ行くために。
水族館の箇所は興味があまりないため飛ばすが、室蘭には室蘭港があり、2008年以降使われなくなったフェリーターミナルがある。しかし2018年6月より室蘭港に新たな航路が誕生する。
室蘭宮古だ。10時間で結ぶ。これは初めて知ったがトラックドライバーの労働条件に、仕事が終わってから次の仕事までに八時間以上の休息時間が必要とのこと。ドライバーが途中でフェリーに乗る場合、フェリーの乗船時間は休息時間になるという。
ドライバーにとって、使い勝手のよい航路になるらしい。

2017年8月上旬
敦賀→苫小牧東港 0時30分発
すずらん

深夜航路の中でも船内設備が突出している。
お風呂は、大浴場、サウナ、露天風呂があり、エントランスは吹き抜けでレストランも充実、アミューズメント施設、カフェ、プロムナード、サロンもあり、イスやソファも沢山置かれている。2等船室でも相部屋にベッドが備えられている。普段はトラックとコンテナ輸送がメインだが、このときは夏の繁忙期なので、乗用車も多く船に乗り込んだ。20時間の航路となるため行楽客でも最後の方は無口になっていく様子が書かれていた。

2017年1月1日
和歌山→徳島 午前2時40分発
南海フェリー かつらぎ

今でも残る鉄道連絡船。ただし和歌山側のみ。しかも深夜は終電は終わっている。
この日の徒歩客は5名ほど。10台ほどの乗用車も積み込まれた。深夜便の椅子席はガラガラで仮眠の取れるカーペット席には客がまばらに。著者は徳島についたあと、吉野川水系に残る渡し船、今切川の県営長原渡船へ。

2017年5月下旬
神戸→小豆島 午前1時発
ジャンボフェリー りつりん2

深夜航路で徒歩客で賑わうのはこの航路だけではないか、と著者が書く。コンテナが船に積み込まれていくのと同時に週末を高松や小豆島で過ごすレジャー客も多い。300名ほど乗り、熱気ムンムンで雑然とした船内。立ち食いうどんをすする沢山の人、デッキで缶ビールを飲む沢山の人。つい深夜であることを忘れてしまう。
著者は小豆島に着いたあと、土庄町小江の小さな渡し船を体験しにいく。小江集落と沖之島を結ぶもので1、2分で着くし、渡し守さんがささっと気軽に渡してくれる。階段などの高低差となく歩くような感覚で使える船だ。しかし橋を架けようという計画もある。そうなると今のような便利さでは渡れない。橋の下を船が通れるよう階段も出来るだろうし架かる場所まで歩かなくてはいけないし。それから費用も土庄負担で5億とあり反対の声もあるそうだ。

2017年6月末
神戸→新居浜 午前1時10分発
オレンジフェリー おれんじホープ

深夜航路の中で徒歩客を想定していない航路。コンテナを降ろす作業が急ピッチで進み、トレーラーがひっきりなしに行き交う
フェリーターミナル前は船に一切近づけない。トレーラーが行き交い危険なのか徒歩客は旅客送迎車に乗せられ船に乗船する。船室フロアまでいくと静謐な雰囲気。船は隅々まで美しく清掃されておりそれぞれドアが設けられた個室だ。広々とした浴場があり、サウナも。夜のレストランも営業。メニューは豊富で価格も手頃。
著者は新居浜についたあと、新居大島へ向かう小さな航路へ。

2017年7月上旬
直島→宇野 0時15分発
四国汽船 アートバード

短距離深夜航路。今やアートの島として知られる直島。真夜中にアートを見ると違ったように見えてくる。客は20人ほど。釣り師もいるがその他大勢は交代勤務の三菱さん、とのこと。三交代勤務のため深夜航路があるらしい。直島宮浦発のこの便には勤務を終えた20代~30代の従業員たちが乗る。
著者はこのあと五人宗谷(ごにんぞわい)へ。この伝説の話は初めて知ったが怖い話だ。五人宗谷の岩は海面すれすれに頭を出す。

2017年4月下旬
柳井→松山 午前1時発
周防大島松山フェリー しらきさん

徒歩客は三名のみ。やはりトラック輸送がメイン。船室はひじ掛けのない三人用の座席、カーペット席がある。三人が三人用座席に散らばる。
船は直接松山に行かず周防大島伊保田に立ち寄るとあったが今回は誰も乗り降りしなかったので直接松山へ。折り返し便となり、今度は伊保田へも立ち寄る。著者は伊保田に朝4時半すぎにつき、その後情島陸奥記念館へ。情島情島小中学校は2017年3月末に休校となったばかりだった。情島のおばあさんの話が印象的
都会はお金を使うばかりで他にやることない。島は気楽。野菜だって、つくりたいからつくっている。

2017年5月下旬
徳山→竹田津 午前2時発
周防灘フェリー ニューくにさき

徒歩客は二名のみ。
ガラガラの船室は雑魚寝タイプのカーペット席でもイス席でもどこでも寝放題。著者は国東半島南部のカブトガニを見に行く旅へ
香港では昔、食用としてカブトガニが売られていたという。著者は今回交尾するカブトガニのつがいがわずかな砂地で見ることができた。


2017年5月ゴールデンウィーク
臼杵八幡浜 0時55分発
宇和島運輸 さくら
大分県愛媛県を結ぶ航路は便数が多い。この日はゴールデンウィーク中でもあるため、トラックの他に乗用車も多い。しかし徒歩客は三名のみ。雑魚寝タイプのカーペット席はゆったりと空いている。
八幡浜へ着くと待合室へ。しかし待合室のイスはひじ掛けがあるので横にはなれなかった。
著者は八幡浜から小さな航路を利用し大島へ。八幡浜大島は総称で、粟ノ小島、大島、三王島、地大島、貝付小島が数珠繋ぎで粟ノ小島以外は繋がっている。砂州で繋がるところもある。

2017年7月
宿毛→佐伯 0時半発
宿毛フェリー ニューあしずり

船首の車両甲板から乗り込むが乗用車もトラックもない。船員さんから
「夜の海に吸い込まれないでよ」
と言われる。
それもそのはず、今夜の船は著者一人だけ。貸し切りだ。徒歩客が一人だけ、というのではなくトラックと乗用車も乗らない。
一人だけ、の旅。
カーペット席も勿論誰もいない。
貸毛布は100円を入れてコインロッカーのように取り出す。
一人だけなので落ち着かなくなり自販機でカップ麺を食べたり喫煙所で一服したりしたそうだ。
著者は水ノ子島の灯台の光を見たかった。水ノ子島は周囲300メートルしかない。午前2時半の海は辺り一面漆黒の闇。そこに照らされる力強い光。

著者は佐伯に着いたあと、水ノ子島へ漁船を借りて実際に上陸する。1986年までは海保職員二人が一週間交代で寝泊まりしていたというが、灯台以外は何もない島の生活というのはどんなものだったのだろうか。自由に歩き回れない島で。

2017年5月下旬
博多→対馬 午前1時発
壱岐対馬フェリー みかさ

別の本で孤島としての対馬のページを読んだばかりだったので、その視点とは違う視点からの対馬の様子が面白かった。タクシーで迷った著者は本来とは違う航路へ。イス席で良ければ空いてるとのことだったが、キャンセルが出てベッドがあてがわれた。
イス席が多くあるのに予約でいっぱいというのも、旅客定員を12名に限定し貨物船として運行するため。12名だけなので少し大きめベッドはゆったり配置。船内設備はシャワールームも無ければカップ麺の自販機も無し。飲料の自販機のみがある。
著者は対馬の厳原に着いたあと、バスで二時間かけて比田勝へ。韓国南部の釜山と比田勝は高速船が頻繁に発着し一時間で行けてしまう。韓国人旅行者が目立つ。
さて、著者は比田勝から出る博多行きの航路に乗る。韓国とは裏腹に国内便は比田勝からは一日一便しかない。この航路に乗る目的は、沖ノ鳥島を拝むため。この日は奇しくも5月27日。一年に一度だけ沖ノ島の上陸が許されている日。しかも来年2018年は世界遺産になっているだろうからこの日すらなくなる、本当に最後の日。女人禁制の島。
この沖ノ島島を一番間近で見られる航路に著者は乗った。同じ著者が書いた秘島図鑑にもこの島のことが載る。

2017年9月上旬
鹿児島→桜島 午前2時半発
桜島フェリー

このフェリー、1984年から24時間運行している。鹿児島と桜島間は15分。船内うどん屋「やぶ金」も勿論24時間営業。1階と2階は車両甲板、3階は船室、4階がデッキ席で外観は高層マンションのよう。徒歩客は10名、乗用車、トラックは合わせて10台。一日70往復もする船。救急搬送や桜島の噴火、地震のとき用、救難船の役割も担う。やぶ金は一日二人交代らしい。
著者はこのあと無人島定期航路で新島へ。新島は無人なのに定期航路がある。2013年に最後の二世帯三人が離れて無人に。しかし定期航路があるので朽ち果ててはいない。帰りの船で船長に色々聞いても答えが返ってはこない。船長は島人が減っていく姿、無人になる姿、住む人がいないが運行する船、内心複雑なのかもしれない。

2017年9月上旬
奄美大島→鹿児島 午前2時発
フェリーとしま

この航路も他の本でも読んでいた最中で、この深夜航路と共に読むことで、この航路がより分かり色々な角度から知ることができた。

奄美大島2:00→宝島5:05→小宝島5:45→悪石島7:10→平島8:20→諏訪之瀬島9:15→中之島10:30→口之島11:30→鹿児島18:50

奄美大島の名瀬では前日の18時から乗船できる。出航の8時間前に乗れるのは寛大だ。
著者は夜20時半に乗船。100円で5分使えるシャワーで体を洗い、自販機のカップ麺を食べる。2等のカーペット席で毛布にくるまる。
乗客は40~50名ほど。電気工事やインフラ工事の作業員の方々。
船は一階は案内所やカーペットの2等
二階は1等 相部屋の2等
三階はレストランや売店
四階は操舵室、ヘリコプター離発着可能なデッキ

この回では光害について言及していた。わたしも以前「星の地図館」という本のDVDで世界の夜の光輝き具合を見てたからわかる。トカラ列島の航路は夜の本当の暗さがよく分かり星が沢山見えるそうだ。
夜が明けると飛び石航路だ。各島での出会いと別れが船上で眺められる。宝島後方からは人の暮らした記録はない横当島と、上ノ根島が見える。同じ著者の秘島図鑑に詳しく書いてある。平島から諏訪ノ瀬島に行くときに臥蛇島小臥蛇島が見える。
実は別の本で大接近した様子を読んでいた。
清水氏が書いたこの本には、最後まで島に残った三世帯14名と小学校教諭の2名が最後の船に乗り込んだ、とあった。臥蛇島では移住反対の中心的存在だった家族が昭和四十四年に突如県外へ移住し残された島民に衝撃が走り、そこから移住話が加速、一年後には皆、島を離れたとあった。
一人一人が島では存在感が凄いと改めて思う。

さて、以上14の深夜航路が書かれていて大変面白かった。地図もあり位置関係など分かりやすかった。所要時間の記載も勿論ある。著者は東京で働いているようで休みを見つけては日本のあちこちへ行く様子が伺える。東京で夕方に仕事を終えたあと新幹線で関西へ、とか九州へとか凄い。そこから深夜航路を行く船に乗るのだから凄い。そして独自の視点からの旅行記、読みごたえがあった。